2009年5月31日日曜日

本当に使いたい漢方薬

前回のブログにも登場の一般薬を出しているメーカーさんとの話しの続きです。
インフルエンザ以外にも、本当に使いたい漢方薬は保険適用がされていないということが、悩みということが話題になりました。
常々思っていることなんですが、効果のある漢方薬ほど、保険適用がされていないのです。
これは、国家的な策略か、はたまた既存の漢方製薬メーカーの企みかはしりませんが、事実効果が挙げられる薬ほど保険適用がなされていないのです。
前回のブログの続きからすれば、インフルエンザには、麻黄湯を飲むより、銀ぎょう散(+バンランコン)を飲んだ方が、はるかに効果的な方が多いと思います。
一体どういう思惑が働いて、このような制度になったのかは知りませんが、将来的な展望を考えれば、保険適用される薬を定期的に見直していく必要性はあると思います。
企業の理念が通るのではなく、実地の医療に見合った改定は必要なのではと思っています。

2009年5月30日土曜日

インフルエンザと麻黄湯

中成薬で有名な某製薬メーカーの方とお話しする機会がありました。
会話の中で必然的に、新型インフルエンザの話題になりました。
そのなかで、麻黄湯が最近急激な勢いで売れているとのこと。
たしかに、私もインフルエンザの方に麻黄湯を出すことはありますが、ごく限られた方たちだけです。
何でですか?と尋ねると、「某週刊誌で取り上げられた」ことが原因とか・・・。
あきれて、言葉を失ってしまいました。
なんでも、麻黄とはタミフルと同等の効果があると書かれてあったとのこと。
ヘソで茶が沸きます。
こんな記事を書いて、麻黄湯が売れに売れるのは、そういった仕掛けをしたメーカーがいるのではと、疑ってしまいます。
どうせ、証を診ないで出すなら、銀翹(ぎんぎょう)散のほうが、まだ効果があるかもしれません。
麻黄湯が効果があるなら、葛根湯はどうなんでしょうか。
こういう使われ方をしている以上、漢方薬が持つ本来の効能、効果は絶対得られないでしょう。

2009年5月29日金曜日

難渋する場合

当院に来られる方は、他院で一通りの治療を済ませられている方たちばかりなので、西洋医学的治療をスキップできるのは、ある意味治癒への一歩を早く進められると思っています。
ただ、中には難渋する場合もあります。
1年以上も咳に悩まされている方がいらっしゃってますが、なかなか手ごわくて、難渋しています。
肝胆湿熱証がベースなのですが、来院時には既に脾気虚に腎陰虚を合併されていました。そのため、咳を止めようとすると、麻黄が余計だったりと、エキス剤の選択に頭を悩ませる日々です。
そんな場合でも、適切なエキス剤の合方で、治ってきますから、やはり漢方薬のポテンシャルはあるな~と、一人勝手に思っています。

2009年5月20日水曜日

防風通聖散を処方されている方へ

最近拝見した初診の患者さん。
お決まりで、定期的にのんでいる薬をきいたら、漢方薬とのこと。
何をのんでいるのか聞いたところ、なんでもここ2~3ヶ月でゲキ太りし、近くのお医者さんに受診したら、防風通聖散を処方されたとのこと。
あちゃーと、思いつつ、そういうそぶりは見せずに、拝見しました。
当院へは、別件で受診されたので、診察のうえ処方したのですが、あえて付け加えさせていただきました。
「で、その漢方薬、効果ありました?」
「ないです」と、即答をいただきました。
そりゃそうでしょ。
あなたに合っているのは「○○○湯」ですから。
しかし、なかなか、言えないんですよ。
「その先生は漢方で何人もの肥満の方をなおしているんですっ!」と、言われてしまうとね~。
効果ないって、ご本人が言っているんですが・・・。

2009年5月19日火曜日

オケツと腰痛

タイトルからすると、お尻と腰痛のような印象ですが、違います。
お(=やまいだれに於)血で、血液の滞りを意味します。
どんな疾患でも、長期に患った場合、このお血を合併することが多くあります。
お血というと、どうしても女性の病証といったとらえ方をされがちですが、男性にも当然あります。
最近お見えになったかたは、4年前から大学病院で「脊柱管狭窄症」と診断され、血行改善剤と痛み止めを処方されているが、一向によくならないとのこと。さらには、朝目が覚めて起きても立ち上がるまでに2時間ほどかかる時があるとか・・・。
大学病院でいくら説明しても処方が変わらず出ていると。
なるほど、なるほどと、拝見させていただきました。
舌証としては、寒が中心の疼痛ですが、4年の歳月は、お血も生じさせていました。
散寒+活血の処方である●●●●湯を処方させていただき、無事疼痛も改善、朝目覚めても、すぐに立ち上がれるとのことでした。
止痛にだけ目が行ってしまうと、散寒の処方はいくつもありますが、お血がキーワードとなる疼痛はこの処方だけで、ほぼ改善してしまうと思っています。

2009年5月14日木曜日

小青竜湯を希望された方への説明と処方

「子どもがアレルギー性鼻炎でひどいので、小青竜湯を処方してください!」
と、診察時にいわれた親子の方がいらっしゃいました。
以前も小青竜湯の証の方がすくないというブログを書いてますが、この方もやはり小青竜湯は合わないと、診察の上、判断させていただきました。
「汗かきやすいし、寝汗もある、そして、足がほってって、一年中家では裸足なんです。」
これだけ、キーワードがならべば、処方は○○風散しかありません。
「今回だすお薬でおそらく、治ると思います。2週間後いらしてください。」と、いって処方させていただきました。
2週間後の再診時に伺うと、
「もらったその日、帰ってすぐ飲んだんですが、その日から、症状が軽くなって、くしゃみや鼻水がすくなくなったんです!」とのこと。
3つの薬味でも、これだけ効果があれば、どんなにまずい薬でも、お子さんご自身から飲んでいただけます。このくらいのキレがあっての漢方薬ですよね、やっぱり。

2009年5月13日水曜日

長く飲まないと効かない漢方ってあるの?

漢方薬で治療をしますというと、必ずこう聞かれます。
「長く飲まないと、効かないんですよね?」
誰が、言ったのかは存じませんが、私の答えは単純です。
長く飲まないと効かない漢方薬=証にあってない、あるいは誤投薬と、いうことです。
だいたい、薬で長く飲まないと効かないなんて種類のものがあるのでしょうか?
西洋薬で、そんな薬がないのと同じく、漢方薬でも、そんな薬ありません。
要するに、漢方薬を誤投与している医者の言い訳なんでしょう。

自分が処方をさせていただいている患者さんには、次のように言ってます。
「今日拝見させていただいた所見で、漢方薬を出しますが、2週間で効果が出なければ、それは薬が合ってないと考えられます。その場合、処方の調整をさせていただきますから、効果がない場合は遠慮なくおっしゃってください。」
薬味の調整をしてこその漢方薬です。
診断病名の延長で処方することほど、漢方薬をないがしろにしていることはないでしょう。

2009年5月12日火曜日

self control

漢方薬の醍醐味は、自己診断ができれば、自分で治療が出来る点でしょうか。
もちろん、正しい診断能力があることが前提です。
当院近くの調剤薬局のT先生がきていわく、
「腰痛あるので、牛車腎気丸を処方してほしい」とのこと。
なんで牛車腎気丸なの?と、質問すれば、自己診断の根拠を並べられて・・・。
実際に処方をさせていただきました。
で、3日後、「ききますね、牛車腎気丸。もうすっかり痛みきえました!」とのこと。
いや、牛車腎気丸がきいているのではなくて、自己診断が正しいということでしょう。
こういう方は増えていくと、私は廃業となるのでしょうか・・・。

2009年5月7日木曜日

炎症性色素沈着

初夏を思わせるような日も最近多くなってきました。
そうなると気になるのは、紫外線です。
お肌の大敵であり、外出も控えたくなりますが、家にこもっているわけにはいきません。

そんなおり、紫外線が原因の肌のしみの相談がありました。
いままで、市販薬をつかってみたものの、あまり効果がないとのこと。
私からしたら、目立たない方だとおもうのですが、ご本人にとってみれば、一大事です。
なんとか改善する方法がないかときかれ、「個人差はありますが、漢方薬で経過みてみますか」と、いうことになりました。

紫外線アレルギーなどが原因の炎症性色素沈着と診断。
それなら当帰芍薬散と、いいたいところですが、それでは製薬メーカーの思うつぼです。もちろん証を見た上で、当帰芍薬散があっているなら出しますが、めったにお目にかかれません。
3種類の処方を合わせて、様子を見ていただくことになりました。

2009年5月1日金曜日

竜胆瀉肝湯は膀胱炎だけの薬ではありませんっ!

保険診療は病名が必要とはいえ、竜胆瀉肝湯ほどひどい病名をつけられている方剤はないでしょう。ついこの間も、春になると手の痒みで受診された患者さんがいました。
なんでも、毎春、決まって手の湿疹ができるとのこと。
いつもの如く、視診、舌証に脈診を拝見、肝胆湿熱に加え、肝火を認めたため、竜胆瀉肝湯を処方させていただきました。しばらくして、調剤薬局のT先生からお電話・・・。
「さきほどの患者さん、自分は膀胱炎で受診したんではないんですけどと、電話が入ったんですが」とのこと。けれど、そこはT先生の説明で、飲んでいただくことにご理解をいただきました。
2週間後の受診のとき、患者さんいわく
「不思議なんですね~、この薬。膀胱炎の薬なのに、湿疹がなおるんですよ。やめるとまた湿疹が出るので、また飲み始めると消えるんですよね~」とのこと。
あの~、私は膀胱炎で出してるんじゃなくて、湿疹で処方してるんですが・・・といっても、理解はしてもらえませんでした。
瀉肝と名前がついているのに、なぜか下焦の湿熱の病名だけがついてしまったなんて・・・。
もうすこし、病名はなんとかならなかったのかと思います。