2009年12月22日火曜日

そんなに麻黄湯が処方したいのですかね~

妻から雑誌を見せられ、麻黄湯をインフルエンザの第一選択薬にしている小児科医の記事を拝見しました。内科医の先生が書かれたものなら、別段気にもしなかったのですが、「小児科医」という点に敏感に反応してしまいました。
おりしも、菅沼先生の講義を聞いたばかりでしたから、なおさらでした。
記事を読む限りでは、「麻黄湯はタミフルと同等の治療効果がある。タミフルは副作用があるが、麻黄湯ではその点も大丈夫・・・」と、途中で読む気がなくなりました。
麻黄湯に副作用がない?とんでもない誤解です。
それに、タミフルと同等ってどういう意味なんでしょうか?
このように、病名処方を続ける医者がいる限り、漢方薬の正しい運用は絶対に行われないし、その効果も全く期待できないでしょう。
だいいち、小児に麻黄湯を処方するナンセンスが私にはわかりません。
風温初期は銀𧄍散というのは、以前にも書いたこと。
麻黄湯証の人は、私のところには年1人か2人程度です。
こういう記事が一般の方へ配布される害は、すでに出ています。
その代表が、脂肪をとる「あの」薬です。
いっそのこと、ご希望の方に、漢方でメタボ外来をやろうかと思う今日この頃です。

2009年12月14日月曜日

早くも鼻炎の方がいます

来年の話をすると鬼が笑うといいますが、すでに鼻炎が始まっている方がいます。
スギ花粉とは考えにくいので、おそらく雑草系とくにイネ科の花粉に反応しているのではないかと思います。
本日も、数名鼻炎症状の方がいました。
今の時期から鼻炎症状を訴える方は、当然シーズン中は重症となります。
西洋薬では、大学病院で治療しようが、当院で治療しようが、同じ保険適応の薬だけが使えます。
ですから、どこで治療しても原則同じです。
が、漢方治療は異なります。
というのも、何を処方するかで効果が全然違うからです。
当院でよく処方されるのは、○○○散か▽▽飲でしょうか。あと、■■■散もよくでます。
ここでも、温病の知識が役に立ちます。
やはり、アレルギーは炎症性疾患ですからね。
さて、来年はどんな傾向になるのでしょうか・・・。

2009年12月12日土曜日

肥満と漢方

メタボの検診が定着したのか、最近質問が多いのが、「やせる方法について」です。
運動とお答えしていますが、「3日坊主」が通例という方がほとんどでしょうか。
当院でも運動療法実施していますが、体重が減った状態を維持できている方は少ないです。
日本人の肥満を中医学的に捕らえるには、湿の存在はかかせません。
ですから、各メーカーさんが一生懸命販売している、防風通聖散は合ってない方がほとんどではないでしょうか。(前のブログにも書きましたが・・・)
湿が入っている原因臓腑をどこに求めるかにもよりますが、肝なら●●●湯とか、脾なら■■散とか、▲▲▲▲散とかがあげられます。
別に、やせることを目的に処方しているわけではないのですが、慢性じん麻疹で受診中の方には●▲■湯を処方しています。最近の受診時に「先生、なんか急にやせちゃったんだけど」とのこと。
「変な病気ないよね。調べてくださいよ」と、おっしゃったのですが、もちろん正常です。
やはり、こういう証にあった処方こそやせるんだなと、改めて思った今日この頃です。

2009年12月10日木曜日

婦人科系疾患

当院は婦人科を標榜していません。
が、婦人科系の疾患のご相談を、よく受けます。
ある方が、「婦人科でないのに、婦人科的な疾患を相談するのに、ちょっと違和感がある」と、おっしゃられました。
ごもっともです。
しかし、問題は婦人科の先生が婦人科疾患を解決できないところにあるのではと、思っています。
もちろん、私も100%は解決できないかもしれませんが、少なくとも当院にいらっしゃる前よりは良い状態になれるように、いろいろな処方を検討します。
本来なら、専門家であれば尚、その守備範囲の疾患はもらさず対処するのが、本来の専門家ではないでしょうか。
全打席ホームランを狙ってこそ、真の4番打者でしょう。
私も、そうありたいと、日々努力しています。
ですから、自分の専門であろうとなかろうと、いらっしゃる方の症状の改善に全力を尽くすのが、私の仕事です。

2009年12月2日水曜日

お肌トラブル解消への道

女性の悩みのベスト3に入りますよね、お肌トラブル。
で、アレルギー科を標榜しております当院としましては、アトピーや慢性湿疹の方の受診が中心となります。が、ときとして、純粋なお肌トラブルの方がいらっしゃいます。
本来、肌とは、内臓の調子や生活習慣を反映しやすいのですが、それらを「置いて」やはり、肌を改善したいとうご希望は多くあります。
美容系の診療科ではないのですが、漢方薬を用いて体内から「デトックス」はできます。さらには、西洋薬を併用することで、相乗効果も得られます。
つい最近も、肌荒れを何とかしたいと、いらっしゃった患者さまがいました。
診察後、生活習慣指導の上、処方をしました。
で、1ヵ月後の再診です。
診察室に入ってくるなり、肌が綺麗になっている。
ご本人も、調子が良いとのこと。
けれど生活習慣改善は半分とのこと・・・。
この条件でここまで肌が良くなる漢方の威力にビックリしつつも、さらなる改善を目指そうと思った今日この頃です。

2009年11月28日土曜日

喘息と漢方薬~西洋薬とのコラボ~(+お詫び)

急激に寒くなった為でしょうか、最近喘息を発症するお子さんが増えています。
良くあるご相談が、「咳がとまらない」ということ。
もちろん、喘息治療はきっちりとされています。
西洋医学的には、しっかりと治療されているんですが、止まらない咳・・・。
心配されているご両親からは、「担当の先生からは、これで治る、大丈夫だから」と、いわれているのに、なぜこんなに咳が続くのか?という疑問をお話されます。
私のお答えとしましては、「西洋医学の限界」と答えています。
これは、西洋医学的治療では、この咳は止まらないということです。
「?」と、いう表情をされてしまうことが多いのですが、決して西洋医学がダメということを申し上げているわけではないのです。西洋医学では、カバーしきれない症状があるということです。

もちろん、ここで漢方薬の出番です。
たいていのパターンは脾湿に寒邪が入ってしまっている場合です。
(時に、陰虚の場合もありますが・・・)
登場するのは●●●●●●●湯、△△湯といったところです。
カゼを引いた後では、熱が軽くのっている場合がありますから、■■湯を合わせることもあります。
あとは、量の調節と合法の調節でしょうか・・・。

1ヶ月前に来院された方は、この秋に3回も連続入院したのに、ぴたりと咳が止まったとのこと。
「西洋薬はやめてしまいました」と、お母様がおっしゃられたのであわてて「西洋薬も、ちゃんと続けてくださいね」と申し上げました(冷汗・・・)。

P.S.
はっちょんパパ&ママさんへ
せっかく、ご来院いただいたのに、すいませんでした。
水曜日は、午後に大井町の健康増進セミナーの講師に出かけることになっていて、外来受付を早めに切り上げていました。どうも、すいませんでした。この場をかりてお詫びします。

2009年11月25日水曜日

最後の難関だった方

最近はインフルエンザの流行が激しく、かなり外来の患者さんをお待たせしてしまっています。
そんな中、重症のアトピー性皮膚炎の患者さんが定期受診にいらっしゃいました。
長いこと無治療で経過されていた方で、各種の処方を繰り出し、調整をしながら経過していたのですが、なかなか改善しません。
検査データ値も、治療前よりは良いものの、とても「良くなった」というレベルには達していない状況が続いていました。
半年近く続けていた、清熱目的の●●●●湯をついにあきらめたのは、丁度1ヶ月前でした。
「薬を変えますね。これ以上、●●●●湯では改善が見込めないでしょう」とお話しすると、
「やっぱり治らないんですかね・・・」と、がっかりしたご様子。
「そんなことありません。清熱剤はこれだけではありませんから。今回から、■■■■湯へ変えます」とお返事すると「はぁ・・・、そうですか。それで治る見込みあるんですかね・・・」
あまり信用されていないご様子なので、薬味を説明させていただきました。なぜ、この薬を選んだのか、その理由も合わせて伝えると、少し納得されて、お帰りになりました。
で、先週の土曜日。
「いやー、先生良くなりましたよ~」と、診察室のドアが開けられると同時に、笑顔が見えました。
あれ、確かに顔の赤みがない!
肘の皮膚も綺麗になってる!!
長い期間、頑張って治療を続けていただいた患者さんに感謝すると同時に、治癒への道すじが見えた瞬間でした。

2009年11月13日金曜日

胡栄先生の講義

私が最も尊敬する先生の一人が、胡栄先生です。
先生は北京中医薬大学を卒業されたあと、1979年、ご主人の菅沼先生と日本に来られ、以後各地で講演、研究会をされています。
先生が著された書籍も数多く、私も勉強させていただきました。
実際にお目にかかったのは、今週11日の水曜日。
伊豆漢方研究会に参加させていただきました。
講義内容もとてもわかりやすく、自分の勉強の足りないところも発見できました。
なによりも、先生が気さくに質問にもお答えいただいて、そのお人柄も素晴らしい方でした。
この講義でも先生が強調されていた「湿」ですが、やはりいろいろな悪さの元になります。
感染症、慢性疾患、生活習慣病etc・・・。
改めて、湿の認識を強くしました。

残念なのはただ一つ・・・。
先生の書いた教科書を持っていかなかったこと。
サインを頂けなかったことでした。

2009年11月10日火曜日

原因不明の湿疹

当院へいらっしゃる方で多い訴えの一つが湿疹です。
それも、原因不明のことが多いのは、以前のブログでも書きました。
秋も本番となってきて、さらにこの湿疹の訴えの方が多いと思います。
みなさんの共通項はただ一つ。いわゆる、湿熱です。
環境的にも湿証が多い日本でもって、熱を呼び込みやすいのは、食事や生活習慣が原因と推測しています。
湿熱が入りこんでいる臓腑により処方は変わるものの、原則○○○湯もしくは■■■■散のどちらかで、落ち着いてしまいます。もちろん、西洋薬も一部併用しますが、ほとんどいらなくなってしまいます。
即効性もあり、重宝しているのですが、一般的にはしられていない処方のようで、使っている先生に会うことがほとんどありません。
もうすこし、汎用されてもよいのではと、思う今日この頃です。

2009年10月30日金曜日

ウツのツボ

漢方薬でウツの薬というと、香蘇散とか、半夏厚朴湯とかがよく取り上げられます。
が、個人的には半夏厚朴湯はともかく、香蘇散などはそれほど証が合う方がいないと思っています。
気滞の診断になる方が少ないのかもしれません。むしろ肝気鬱結の方はお目にかかることが多いですが、今注目しているのは、脾虚が中心にある方のウツ証です。
ただでさえ、日本人は脾虚が多いところへもってきて、過食などが原因となってウツの症状をきたしているといった診断になるのが、一般的な傾向です。

なんでこんなことを考えているかというと、それは、先日うかがった整体の先生の治療結果からの考察からです。

久しぶりにうかがって、近況をお話しながら整体治療をうけていました。
「最近食べ過ぎてしまうんですよね~。運動しているせいもあって余計に食欲がでてしまって・・・」
何気なく言った一言に、先生曰く「じゃ、治しておきますよ」とのこと。
はて、治すって何を???と、思っていると、激痛の経絡を刺激され・・・。

で、治療後。お昼を食べようと、近くの食堂へ入って、注文しようとするが・・・・・あれ?
食欲がない・・・。お腹すいているんだけど、食べたくない・・・。
やられたと思いました。見事に、食欲が落ちるツボを押されてます。
そして数時間・・・。今度は、軽い落ち込みモードに・・・。
家に帰ってから○○○湯を内服して、症状を持ち直しました。
もともと脾虚傾向にある自分が、食欲おちたらウツっぽくなったのがきっかけで、脾虚も昂じればウツのもとになるのかと考察しているこのごろです。

2009年10月22日木曜日

やっと治ったPC

しばらくブログを更新していませんでした。すいません。
と、いうのも、PCの調子が悪いところへもってきて、アンチウイルスソフトが期限切れというダブルパンチに見舞われてしまいました。さらには、医師会の仕事で、9月から始まった、セミナーの準備やら司会の仕事におわれて、PCをほったらかしにしていたのがたたり、再起不能に・・・。
本日無事、蘇生でき、ホッとしたところで、まずはブログの更新からです。
(外来に来ていただいた患者さまの中にも、「インターネットをみました」と、言われるようになって、ちょっとうれしく、逆に、真っ先にブログの更新から始めねばと思っていました。)

ウィルスつながりでいえば、「新型インフルエンザ」です。
ワクチン騒動も続いておりますが、我が家では、銀ぎょう散製剤でしのいでします。
9月末に子供の運動会があったのですが、うちの子の出場種目の組み体操で、パートナーの子が欠席に。なんでも、インフルエンザにかかってしまったとのこと。
ありゃ?あなたは大丈夫なの?と聞いたら、少しのどが痛かったけど、前に言われてたとおり、銀ぎょう散をのんでおいたから大丈夫とのお返事。
うーん、すでに親の判断をきかずに、インフルエンザを克服していたとは・・・(汗)
やはり、適切な処方製剤は医者いらず・・・。
子供の話に一人焦るのでした。

2009年8月28日金曜日

リウマチ治療における漢方薬の誤解

漢方薬のサイトやブログで「リウマチが治った」という表現、ニュアンスをよく見かけます。
治るのかもしれませんが、大きな誤解をされているところもあるようなので、私見を述べさせていただきます。
リウマチの治療は、2つの大きなカテゴリーがあります。
ひとつは、「関節の痛みをとる」こと。そしてもうひとつは、「関節の破壊を抑制する」ことです。
これら2つはまったく別の治療方針を取らねばならないことに注意が必要なのです。
リウマチ治療に漢方薬を取りあげているサイトでは、むしろ、痛みをとる治療に比重がおかれている気がします。
確かに、西洋薬では痛みをとる治療薬というと、ステロイド剤かもしくは、非ステロイド性の消炎鎮痛薬しかありません。これらで取れる痛みは、正直もうしあげて限られています。
その点漢方薬は、個別の痛みに対して、まったく異なる処方をすることができる点で、非常にすぐれていますし、有益であります。このブログでも何人かの患者さんの実例を紹介しているのも、漢方薬の特筆すべき点を認めているからです。

しかし、ここに落とし穴があります。
つまり、痛みがないことはリウマチが「治った」ことにはならないからです。
先にあげましたように、漢方薬が関節の破壊を抑制できるか?については、十分な論拠がないのです。実際に痛みがなくても、関節の変形が進んでいく方もいます。ここが、最も注意しなければならない点です。
関節破壊の抑制という視点では、圧倒的に西洋薬の方が実績があります。
そういう意味からすれば、現在リウマチの治療においては、西洋医学と東洋医学の理想的な融合が可能な時代になったのだと思っています。

2009年8月13日木曜日

ついに来ました

夏休みの部活合宿などで、新型インフルエンザが増えています。
そして、つい最近、当院にも、疑い患者さんが受診されました。
簡易検査では一人のみA型でした。
しかし、集団で発生していることから、保健所が対応して、精密検査をすることに。
翌日、「新型でした」の報告。
ついに来たか~と、思いました。
早速、その日から、銀ぎょう散と、バンランコンを服用開始としました。
そして、1週間経過となり、発症はしませんでした。
これで、貴重な「新型インフルエンザの生ワクチン」を、頂いたことになります。
感謝は、銀ぎょう散とバンランコンと患者さんに致しました。
*危険ですから、マネはしないでくださいね。自分に銀ぎょう散が合っているのかは、必ず医師、薬剤師に相談して使用してくださいね。

2009年8月8日土曜日

シェーグレン症候群

目や口のかわき、虫歯ができやすい、ご飯が食べにくい、といった症状が中心の病気です。
圧倒的に女性に多い病気です。
問題は治療方法が西洋医学では、「対症療法」しかないことです。
しかし、漢方の世界では立派な治療法があります。
●●●●丸がそれです。
つい最近も、シェーグレン症候群の方がお見えになりました。
と、いっても当院へは冷えを何とかしてほしいとのこと。
「シェーグレン症候群の症状は、大丈夫なのですか?」と、伺うと
「だって、どこいっても治療法がないっていわれたので・・・」と、つれないお返事。
「西洋医学的には、そうですね。対症療法しかありませんよね」と言いつつも、肝腎陰虚証を確認。
冷えの漢方薬として、●●●●丸を処方させていただきました。

再診の日。
冷えはかなり改善したとのこと。
「で、乾燥症状はどうですか?」と、伺うと
「あら、そういえば、軽くなってますね。冷えが治ったからかしら」とのこと。
もちろん、対症療法の西洋薬はつづけていただいていましたが、この●●●●丸を加えて、さらに改善したことを確認できて、一安心。
一石二鳥の効果が得られたというところでしょうか。

2009年8月6日木曜日

4年前の打撲も2週間で治りました

その方は、腰痛がひどくて仕事ができないということでいらっしゃいました。
いつから腰痛があるのか伺うと、なんと4年前からと。
詳細を伺えば、仕事中に転んで、腰を打ってしまったとか。
「はじめはそんなに痛くなかったんだけどね~。だんだん痛くなってきて、今年にはいってから、もう駄目って感じになったんで・・・」
さすがに、椅子から立ち上がったり、布団から起き上がれなくなったとのことでした。
気になるのは、治療をどうしていたのか?と、いうこと。
この点を質問すると、「市販の痛み止め、シップを使ってた」とおっしゃいました。
舌証をみると、この暑さにも関わらず、オ血に寒証です。
「冷え性なんですね」と、いうと「夏でも冷房が大嫌い。このくらい熱いのがちょうどいいんだけど、家族が冷房をつかうので、困ってしまう」とのことでした。
こうなれば、処方は●●●●湯で、決まりです。
本日2週間内服で再診していただいたとき、入ってくるなり
「いやー、楽になったよ。もっと早くくればよかったよ」と、笑顔でお話されました。
4年間のこじれた痛みも、2週間あれば効果がでるんですね。
もちろん、方剤が証にあっていればの話ですが。

2009年8月4日火曜日

蝉とかゆみ止め

この前の休日、子供たちと蝉取りに行きました。
シャワーのような蝉の鳴き声に誘われ、自宅近くの公園に行き、蝉を捕まえ、自宅へ帰ってきたときのことです。
突然、屋根からトビが舞い降り、隣の家の外壁に止まっていた蝉があわてて飛ぶと、見事にキャッチャして、飛び去って行きました。
あっという間のできごとで、見事なものだなと思いながらも、トビも「かゆみ止めに使うのかな」と、ふと思ってしまいました。
と、いうのも、最近、風熱証の湿疹の方を多く拝見していたからです。
処方に出すのは、蝉ではなく、蝉退(セミの抜け殻)を薬味にもつ●●散。
もちろん、医薬用のものですから、子供たちが蝉と同時に喜んで拾っていった、抜けがらを使っているわけではありません、念のため。
その日以来、我が家では玄関口で蝉の抜け殻が、お出迎えをしています。

2009年7月30日木曜日

問診表に記載をしてくださいね

漢方ブログを書いておきながら言うのもなんですが、当院では「東洋医学外来」とか「漢方外来」などは掲げていません。
ですので、初診でお見えになった方には、原則、西洋医学に基づいた診断、治療を行います。
例外的に、アトピー性皮膚炎や関節リウマチの患者さんには、漢方治療の話をこちらからします。
ですので、このブログをご覧になっていらっしゃる方は、当院受診時には、「漢方での治療を希望」と書いていただければ幸いです。

加えて、なかなか言い出しにくい症状もあわせて記載していただければ、幸いです。
たとえば、「毛が薄くなってしまった」とか「生理痛が激しい」などなど。
もちろん西洋医学的な治療が合う場合には、そちらを優先させますけど。

そして何より大切なのは、食事を基本とした養生です。
合わせてお話します。

2009年7月14日火曜日

湿痺という表現を実感する日々

本日、関東甲信越も梅雨明けとなりました。
と、同時に症状が軽くなったリウマチの方が続出となっています。
湿痺は着痺ともいい、しつこい痛みのことを意味しますが、リウマチ疾患にこの表現はまさにあてはまります。
以前のブログでも書きましたが、梅雨の時期に症状が強くなると、湿邪をとる処方へシフトする方がおおいのですが、一番顕著にあらわれるのが、梅雨明けでしょうか。
病気の症状も、気候やその土地の食事、生活様式に大きく左右されるということを実感します。
あまりに症状が良くなりすぎ、無理をされてしまうのが、目下の悩みです。

2009年7月7日火曜日

ネタに困ってます

七夕ですね~と、気がつけば、しばらく更新してませんでした。
というのも、ネタが陳腐になってきてしまって・・・。
治ったネタばかりなので、見ている方は呆れてるかもしれません。
けれど、この間もウツで出勤できなかった方の話を書きましたが、7月から元気に職場復帰されたとの話をききましたし、原因不明の湿疹も、漢方で治癒という患者さんもいらっしゃいましたので、そんなに「的外れ」な治療はしてないんではと、一応思ってます。
最近は、どんどん患者さんの訴えが多彩になっていき、自分の専門を忘れそうです。
これを機に、漢方薬のみの診療で東京進出だっ、と門前の薬局社長は言うのですが、自分としては、田舎でのんびりの方が向いているような気がします。
気持ちの余裕は大切ですよね。

2009年6月23日火曜日

胃薬で治るリウマチの痛み

リウマチの方の痛みがひどくなったという方が最近増えてきました。
やはり、痺証、とくに湿痺は梅雨入りと同時に悪化しますね。
おまけに、湿痺は熱も寒も引っ張るので、厄介です。
日本の梅雨のように、肌寒い日があったり、そうかと思えば今日のように夏日になったりすれば、痛みも強くなるというものです。
こういう時に、漢方薬の出番があるというもの。
リウマチで当院へお越しいただいている方が、やはり梅雨入りと同時に痛くなったと訴えられました。
「やっぱり湿気ですね、諸悪の根源は」と、患者さん。
この方は、ご自身でかなり勉強をされた方なので、私との会話も専門用語で進んでいきます。
「そろそろ、処方の変更次期ですかね、先生」と、いわれるので
「じゃ、●●湯を出しておきます」と、二つ返事。
2週間後の再診時には、「8割は痛みがなくなりましたよ~」と、笑顔でいらっしゃいました。
西洋薬では、こうはいきません。
ある意味、漢方治療の正しい姿かもしれません。
ご自身の体調が一番わかるのはご本人ですからね。

2009年6月18日木曜日

漢方に走る医者達

妻から、近所のクリニックで漢方の外来を始めるという話しをききました。
そこの先生は、いままで漢方の「か」の字も掲げていなかった方なのにと思い、
「そこの先生がやるの?」と、聞くと
「漢方の専門の先生を招くらしいよ」とのこと。
このパターンよくあります。

問題は漢方の専門の先生が、どれだけの治療をするかでしょうね。
ただでさえ、処方内容を明らかにしない漢方医が多い日本で、自分が経営していないところで、果たしてどれだけの診断、治療内容を公開するのか?疑問です。

そういう点から見ると、当院は、あまりにも処方内容がオープンすぎます。
お薬手帳にすべて記載していますからね。
ま、それでも、「なぜ、この処方になっているのか?」と、いうことは、西洋医や和漢医の先生には分からないと思いますけど。

2009年6月10日水曜日

製薬メーカーの営業さんとの会話-1-

シリーズ化しようと思ってます、このタイトル。
と、いうのも、ほとんど私にとっては、ブログのネタになるからです。
で、第一弾。
ある製薬メーカーさんが売り込みにきました。
もちろん、漢方薬で、十味敗毒湯です。
このメーカーさんいわく、「ニキビの患者さんに効果があった」と、いうのがセールスポイントとのこと。
説明を聞きながらも、絶句でした。
当院の患者さんで、「ニキビ」に、この漢方薬の処方を考えたこともなかったからです。
基本的に、当院に相談にこられるニキビの場合、オケツか湿熱のどちらかですから、この漢方は選択肢にあがりません。
「こんなデータを出してる先生は、よほど患者さんを選んで処方してるんじゃないの?」
と質問すると、詳細は分からないとのこと・・・。
いくら生死に関係のない病気(?)とはいえ、あまりにもオソマツ。
日本の漢方薬のレベルはこの程度なのでしょう。
ちなみに、当院では清上防風湯は採用さえもしていません、念のため。

2009年6月7日日曜日

ほっとしたニキビの方の再診

以前、アゴのまわりの頑固なニキビで当院へ受診されていた方が、つい最近、風邪症状で受診されました。診察の上、風邪の薬を処方させていただきました。
診察しているときから、ニキビが治っているのはわかっていたのですが、おそるおそる聞いてみました。
「ところで、ニキビはあれからなおったんですか?」
「はい、1ヶ月処方してもらった薬でなおりました~」と、お返事を頂きました。
やっぱり、アゴ周りのニキビには○○○湯と△△△△湯は効果がありましたかと、自分で納得(と、いうかほっとしてもいたりして)

皮膚疾患は医者にとっては結構シビアなんです。
診察室に入ってきた瞬間に、効果があったかなかったか分かりますから。
適切な漢方薬の使用で、このストレスは以前に比べ、激減していますけど。

2009年6月2日火曜日

子どもの嘔吐下痢症

既に舌証が分かっている長男が吐いたと、妻からメールがきました。
確かに今、感染性胃腸炎が流行ってます。
うちの長男は3歳ですが、舌証を見る限り、自分に似ています。
と、いっても湿証だけなので、厳密に言うと違うのですが・・・。
でもって、妻はすでに○○○○湯を飲ませたけどと、事後報告。
いつものことなので、いいんじゃないの~と、気楽にお返事出しておきました。

帰宅後・・・。
妻が困っています。
今日、幼稚園休んでしまって、明日はどうしても出席しなければいけないのだけれど、感染性胃腸炎かもしれないとメールしたら、明日休んでいいよと、返事があったとのこと。
いいじゃない、休めばといったら、どうしても出席したかったんだとか・・・。
ふと見れば、そばを元気一杯に走り回る長男・・・。
「本当に、吐いたの?」と、聞くと
「吐いたよっ!」と、お怒りのお返事。
「漢方が効き過ぎなんだよね~。どうしよ、明日」と、嘆く妻・・・。
「治ったっていっても、信じてくれないよね~」

漢方でよくなっても複雑な気持ちになりました。

2009年6月1日月曜日

医食同源

奥が深い言葉です。
最近受診された方ですが、大のご飯好き。
けれど、ご飯を食べると湿疹ができてしまいます。
脾虚に湿証の方ですから、当然と言えば当然なのですが、考えてみれば食生活の習慣で病気が誘発されていることになります。つまり、そういう体の使い方をしているということです。
このタイプで女性に多いのは、アイス好きと生モノ(サラダなど)好きでしょうか?
一見、健康に良さそうなサラダも取りすぎれば、体への負担になります。
甘いもの、アルコールの取りすぎは言うまでもありません。

今日は、自分の食生活への反省をこめた内容となりました。

2009年5月31日日曜日

本当に使いたい漢方薬

前回のブログにも登場の一般薬を出しているメーカーさんとの話しの続きです。
インフルエンザ以外にも、本当に使いたい漢方薬は保険適用がされていないということが、悩みということが話題になりました。
常々思っていることなんですが、効果のある漢方薬ほど、保険適用がされていないのです。
これは、国家的な策略か、はたまた既存の漢方製薬メーカーの企みかはしりませんが、事実効果が挙げられる薬ほど保険適用がなされていないのです。
前回のブログの続きからすれば、インフルエンザには、麻黄湯を飲むより、銀ぎょう散(+バンランコン)を飲んだ方が、はるかに効果的な方が多いと思います。
一体どういう思惑が働いて、このような制度になったのかは知りませんが、将来的な展望を考えれば、保険適用される薬を定期的に見直していく必要性はあると思います。
企業の理念が通るのではなく、実地の医療に見合った改定は必要なのではと思っています。

2009年5月30日土曜日

インフルエンザと麻黄湯

中成薬で有名な某製薬メーカーの方とお話しする機会がありました。
会話の中で必然的に、新型インフルエンザの話題になりました。
そのなかで、麻黄湯が最近急激な勢いで売れているとのこと。
たしかに、私もインフルエンザの方に麻黄湯を出すことはありますが、ごく限られた方たちだけです。
何でですか?と尋ねると、「某週刊誌で取り上げられた」ことが原因とか・・・。
あきれて、言葉を失ってしまいました。
なんでも、麻黄とはタミフルと同等の効果があると書かれてあったとのこと。
ヘソで茶が沸きます。
こんな記事を書いて、麻黄湯が売れに売れるのは、そういった仕掛けをしたメーカーがいるのではと、疑ってしまいます。
どうせ、証を診ないで出すなら、銀翹(ぎんぎょう)散のほうが、まだ効果があるかもしれません。
麻黄湯が効果があるなら、葛根湯はどうなんでしょうか。
こういう使われ方をしている以上、漢方薬が持つ本来の効能、効果は絶対得られないでしょう。

2009年5月29日金曜日

難渋する場合

当院に来られる方は、他院で一通りの治療を済ませられている方たちばかりなので、西洋医学的治療をスキップできるのは、ある意味治癒への一歩を早く進められると思っています。
ただ、中には難渋する場合もあります。
1年以上も咳に悩まされている方がいらっしゃってますが、なかなか手ごわくて、難渋しています。
肝胆湿熱証がベースなのですが、来院時には既に脾気虚に腎陰虚を合併されていました。そのため、咳を止めようとすると、麻黄が余計だったりと、エキス剤の選択に頭を悩ませる日々です。
そんな場合でも、適切なエキス剤の合方で、治ってきますから、やはり漢方薬のポテンシャルはあるな~と、一人勝手に思っています。

2009年5月20日水曜日

防風通聖散を処方されている方へ

最近拝見した初診の患者さん。
お決まりで、定期的にのんでいる薬をきいたら、漢方薬とのこと。
何をのんでいるのか聞いたところ、なんでもここ2~3ヶ月でゲキ太りし、近くのお医者さんに受診したら、防風通聖散を処方されたとのこと。
あちゃーと、思いつつ、そういうそぶりは見せずに、拝見しました。
当院へは、別件で受診されたので、診察のうえ処方したのですが、あえて付け加えさせていただきました。
「で、その漢方薬、効果ありました?」
「ないです」と、即答をいただきました。
そりゃそうでしょ。
あなたに合っているのは「○○○湯」ですから。
しかし、なかなか、言えないんですよ。
「その先生は漢方で何人もの肥満の方をなおしているんですっ!」と、言われてしまうとね~。
効果ないって、ご本人が言っているんですが・・・。

2009年5月19日火曜日

オケツと腰痛

タイトルからすると、お尻と腰痛のような印象ですが、違います。
お(=やまいだれに於)血で、血液の滞りを意味します。
どんな疾患でも、長期に患った場合、このお血を合併することが多くあります。
お血というと、どうしても女性の病証といったとらえ方をされがちですが、男性にも当然あります。
最近お見えになったかたは、4年前から大学病院で「脊柱管狭窄症」と診断され、血行改善剤と痛み止めを処方されているが、一向によくならないとのこと。さらには、朝目が覚めて起きても立ち上がるまでに2時間ほどかかる時があるとか・・・。
大学病院でいくら説明しても処方が変わらず出ていると。
なるほど、なるほどと、拝見させていただきました。
舌証としては、寒が中心の疼痛ですが、4年の歳月は、お血も生じさせていました。
散寒+活血の処方である●●●●湯を処方させていただき、無事疼痛も改善、朝目覚めても、すぐに立ち上がれるとのことでした。
止痛にだけ目が行ってしまうと、散寒の処方はいくつもありますが、お血がキーワードとなる疼痛はこの処方だけで、ほぼ改善してしまうと思っています。

2009年5月14日木曜日

小青竜湯を希望された方への説明と処方

「子どもがアレルギー性鼻炎でひどいので、小青竜湯を処方してください!」
と、診察時にいわれた親子の方がいらっしゃいました。
以前も小青竜湯の証の方がすくないというブログを書いてますが、この方もやはり小青竜湯は合わないと、診察の上、判断させていただきました。
「汗かきやすいし、寝汗もある、そして、足がほってって、一年中家では裸足なんです。」
これだけ、キーワードがならべば、処方は○○風散しかありません。
「今回だすお薬でおそらく、治ると思います。2週間後いらしてください。」と、いって処方させていただきました。
2週間後の再診時に伺うと、
「もらったその日、帰ってすぐ飲んだんですが、その日から、症状が軽くなって、くしゃみや鼻水がすくなくなったんです!」とのこと。
3つの薬味でも、これだけ効果があれば、どんなにまずい薬でも、お子さんご自身から飲んでいただけます。このくらいのキレがあっての漢方薬ですよね、やっぱり。

2009年5月13日水曜日

長く飲まないと効かない漢方ってあるの?

漢方薬で治療をしますというと、必ずこう聞かれます。
「長く飲まないと、効かないんですよね?」
誰が、言ったのかは存じませんが、私の答えは単純です。
長く飲まないと効かない漢方薬=証にあってない、あるいは誤投薬と、いうことです。
だいたい、薬で長く飲まないと効かないなんて種類のものがあるのでしょうか?
西洋薬で、そんな薬がないのと同じく、漢方薬でも、そんな薬ありません。
要するに、漢方薬を誤投与している医者の言い訳なんでしょう。

自分が処方をさせていただいている患者さんには、次のように言ってます。
「今日拝見させていただいた所見で、漢方薬を出しますが、2週間で効果が出なければ、それは薬が合ってないと考えられます。その場合、処方の調整をさせていただきますから、効果がない場合は遠慮なくおっしゃってください。」
薬味の調整をしてこその漢方薬です。
診断病名の延長で処方することほど、漢方薬をないがしろにしていることはないでしょう。

2009年5月12日火曜日

self control

漢方薬の醍醐味は、自己診断ができれば、自分で治療が出来る点でしょうか。
もちろん、正しい診断能力があることが前提です。
当院近くの調剤薬局のT先生がきていわく、
「腰痛あるので、牛車腎気丸を処方してほしい」とのこと。
なんで牛車腎気丸なの?と、質問すれば、自己診断の根拠を並べられて・・・。
実際に処方をさせていただきました。
で、3日後、「ききますね、牛車腎気丸。もうすっかり痛みきえました!」とのこと。
いや、牛車腎気丸がきいているのではなくて、自己診断が正しいということでしょう。
こういう方は増えていくと、私は廃業となるのでしょうか・・・。

2009年5月7日木曜日

炎症性色素沈着

初夏を思わせるような日も最近多くなってきました。
そうなると気になるのは、紫外線です。
お肌の大敵であり、外出も控えたくなりますが、家にこもっているわけにはいきません。

そんなおり、紫外線が原因の肌のしみの相談がありました。
いままで、市販薬をつかってみたものの、あまり効果がないとのこと。
私からしたら、目立たない方だとおもうのですが、ご本人にとってみれば、一大事です。
なんとか改善する方法がないかときかれ、「個人差はありますが、漢方薬で経過みてみますか」と、いうことになりました。

紫外線アレルギーなどが原因の炎症性色素沈着と診断。
それなら当帰芍薬散と、いいたいところですが、それでは製薬メーカーの思うつぼです。もちろん証を見た上で、当帰芍薬散があっているなら出しますが、めったにお目にかかれません。
3種類の処方を合わせて、様子を見ていただくことになりました。

2009年5月1日金曜日

竜胆瀉肝湯は膀胱炎だけの薬ではありませんっ!

保険診療は病名が必要とはいえ、竜胆瀉肝湯ほどひどい病名をつけられている方剤はないでしょう。ついこの間も、春になると手の痒みで受診された患者さんがいました。
なんでも、毎春、決まって手の湿疹ができるとのこと。
いつもの如く、視診、舌証に脈診を拝見、肝胆湿熱に加え、肝火を認めたため、竜胆瀉肝湯を処方させていただきました。しばらくして、調剤薬局のT先生からお電話・・・。
「さきほどの患者さん、自分は膀胱炎で受診したんではないんですけどと、電話が入ったんですが」とのこと。けれど、そこはT先生の説明で、飲んでいただくことにご理解をいただきました。
2週間後の受診のとき、患者さんいわく
「不思議なんですね~、この薬。膀胱炎の薬なのに、湿疹がなおるんですよ。やめるとまた湿疹が出るので、また飲み始めると消えるんですよね~」とのこと。
あの~、私は膀胱炎で出してるんじゃなくて、湿疹で処方してるんですが・・・といっても、理解はしてもらえませんでした。
瀉肝と名前がついているのに、なぜか下焦の湿熱の病名だけがついてしまったなんて・・・。
もうすこし、病名はなんとかならなかったのかと思います。

2009年4月23日木曜日

10年以上の関節痛

リウマチ以外の方でも、関節の痛みでいらっしゃる方は、多くいらっしゃいます。
つい最近も、他医院の先生からご紹介をいただきました。
なんでも10年ちかく、方々の医院を受診され、いろんな治療法を試したけど、治らない肩と膝の痛みでの受診でした。お決まりの如く、診察をさせていただいて、舌証を中心に●●●●湯と△△△△湯を合わせて処方させていただきました。また、長びく痛みにはお約束のブシ末を付け加え、2週間飲んでくださいとお話しました。
すると、その方は、「漢方ですか・・・」と、タメ息・・・。
「以前も漢方薬だしてもらったんですけど、ぜんぜん効かなかったんですよね~」とのこと。
何を処方されたのか伺うと、八味地黄丸と・・・。
うーん、この証に八味地黄丸か・・・・。効くわけないよねと、思いつつ、
「2週間で効果なければ、言ってください。処方がずれているか、私の誤診ですから」と、お話をして帰って行かれました。
2週間後、「しっかり歩けるし、肩も上がり、そして痛みも半分以下になりました~」と、いらっしゃいました。やっぱり、漢方薬は即効性がありますよね。かゆみでも、痛みでも、効果の発現スピードはいつもながら、感心してしまいます。

2009年4月21日火曜日

舌は口ほどにものを言う

診察所見の中でも、重視するのは舌証です。
舌をみれば、その方の症状、生活習慣などなどがわかります。
例えば・・・
6歳のお子さんの場合。
アレルギー性鼻炎で受診されましたが、舌証はオケツ。
けれども、湿証がないから、糖分の影響が考えにくい。はて?・・・
「まさか、コーヒーは飲んでないですよね~」と、何気なくお母さんに問いかけると、
「そうなんですよ、この子、毎朝お父さんといっしょにコーヒー飲むんです。けど、先生、なんでわかるんですか?」とのお返事。
聞いた自分がびっくりして、しばし、言葉を失いました。

はたまた、15歳のお子さんの場合。
舌証は典型的な花剥舌。
「辛いもの食べ過ぎてませんか?」と、何気なくきいたら
「なんで分かるんですか?誰から聞いたんですか?」
と、逆に質問攻め・・・。
いや、舌がそう言ってるんですが・・・。

これだけ多彩な症状を呈してシグナルを発してくれる舌証は、診断治療の上で欠かせません。
お願いですから、受診の前に、舌を綺麗にしないで下さい。特に、女性の方へのお願いです。

2009年3月30日月曜日

肩こりはつらいですね~

かくいう私も肩こりに悩んでいるひとりであります。
肩こり=葛根湯という、公式があるのか、はたまた某メーカーの策略なのかは知りませんが、証を外した葛根湯は効くわけありません。
本日も、葛根湯を処方されたものの、効果がないという方がお見えになりました。
拝診したところ、見事なオケツ症状。加えて冷え性もありとのこと。
血圧もやや高めであり、丹参をつかった●●顆粒を使用した方がいいのではというアドバイスのみで、痛みがひどい時の痛み止めだけ処方させていただきました。
保険がきかない薬は、自費となりますが、それでも効果のない処方薬を延々飲むよりは、はるかに投資効率がいいと思います。
やっぱり、治ってなんぼの世界ですから。
ちなみに、私もこの薬、愛用しています。

2009年3月26日木曜日

防風通聖散でやせる人って

健康診断に盛り込まれ、すっかり市民権を得たメタボです。
便乗商法がはやるのは、いつの時代も同じことで、各メーカーさんの市販薬をドラッグストアで見かけるのが、この防風通聖散です。
実際に、この漢方薬の適応証を持っている人がどのくらいいるのかはわかりませんが、あたかも「これ飲めばやせる、皮下脂肪が減る」みたいな印象をもたせる宣伝文句はいかがなものかと思います。
本来は裏熱をとる清熱剤であり、ベンピに用いられることが中心の方剤です。
某メーカもベンピ薬で出していたのに、いつの間にか、脂肪を取る薬に変えて売っているのには、苦笑いものでしたが・・・。
イメージとしては、太った赤ら顔の見るからに肥満体質で、ニキビができているような若い方だったら効果があるかもしれませんが。
メタボの診断を受けた方で、はたしてこのイメージがマッチする人は何人いるのだろうと、思うのはわたしだけでしょうか?

ちなみに、今自分が処方を受けている●●●湯は、私の体重を5kg落としてくれました。
防風通聖散では、こうならなかったでしょう。

2009年3月24日火曜日

女性のアトピー

本日女性のアトピー性皮膚炎の方が数名いらっしゃいました。
お一人お一人、処方は違うのですが、共通事項があります。
それは、ホルモンバランスの変化によって、アトピーが生じていることです。
ある方は、生理前に症状が強く出て、生理が終わると症状が軽くなる。
また別の方は、閉経前になって、初めてアトピーの症状が出る。
また別の方は、生理が始まってアトピーになった・・・・などなど。
このように、症状の出方は様々ですが、女性ホルモンのバランスとアトピー性皮膚炎は密接な関連があると考えています。
後は、証を拝見させていただいた上で、処方を決定となるわけです。
オケツが共通項にあることはさておき、問題は、熱証なのか、寒証なのかを見分けることでしょうか。
アトピー性皮膚『炎』というくらいだから、熱証が多いような印象をもたれるかもしれませんが、意外に寒証の方も多いと思います。
寒証の方に、清熱剤を処方してもよくなるわけありません。
そして、寒証のアトピー性皮膚炎は圧倒的に内傷による寒証ですから、治療のポイントは決まってきます。
そこにオケツがどの程度の割合で関与するかは、実際に処方してみて、治療効果を判断した上で、処方内容を調整していきます。
意外に女性のアトピー性皮膚炎を治療しやすいと思うのは、このパターンが出来上がっているからなのかなと思う今日この頃です。

2009年3月19日木曜日

視界良好!

日常診療に忙殺され、さらに雑用の山をこなして、毎日をおくっていました。
更新おくれてしまい、気がつけば、2か月放置・・・。
もうちょっと真面目に更新しますので、よろしくお願いします。

でもって、今日は生薬の処方の話です。
某製薬メーカーの方が、むくみをとるために利尿剤を使っていたけれど、頻回にトイレに行くようになってしまうので、どうしても別の薬がないかと、相談を以前受けました。
診察させていただいた上で、さっそく、○○○○散を処方したところ、非常に良好とのこと。
数日たって、その方が再び受診をされました。
「目がショボショボしてしょうがないんです。運転も危なくて・・・」と。
先に処方した○○○○散が効く肝胆湿熱に加え、オケツを診てなので、●▲地黄丸を処方させていただきました。
数日後、2服飲んだだけで、著効したとのこと・・・。
エキス製剤もいいけれど、やはり生薬はききますね。

2009年1月31日土曜日

そりゃ、治らないよ

漢方治療のみならず、一般に当てはまることですが、どんなに治療してもよくならないことがあります。
生活習慣が原因です。
タバコ、お酒、甘いもの・・・
いわゆる内傷に関係する生活習慣病です。
とくに、湿疹やアトピーに関しては、これら内傷は治療を妨げる大敵です。
けれど、病気を治す以上に大変なのは、これら生活習慣を改善することでしょうか。
コレステロールだけじゃないんですよね。

2009年1月20日火曜日

小青龍湯とアレルギー性鼻炎

花粉症の季節が近づいてきました。
今年は、関東地方に限れば、例年の1.5倍の飛散量だとか。
さまざまな花粉症の治療薬がありますが、漢方薬となると何故か、小青龍湯に限られてしまうのが、不思議です。
前に勤めていた病院では、となりで「アレルギー専門医」の先生が
「花粉症には、西洋薬のコースと漢方薬のコースがあります。西洋薬は眠くなりますが、漢方薬は眠くなりません」と、患者さんに説明していたのを思い出しては、笑ってしまいます。
小青龍湯は、本来「外感風寒」の証に用いる処方ですから、診察して、熱証があれば、当然よくなりません。また、麻黄が入っていますから、お子さんに連用すると、陰を傷つけてしまい、むしろ虚熱を誘発しやすくします。
私が診ている患者さんが、たまたまなのか、あまりこの外感風寒の証にはお目にかかりません。
むしろ風熱型や湿熱型のアレルギー性鼻炎の方が多いような気がします。
また、お子さんでは圧倒的に衛気虚の方が多いので、むしろ○○風散を処方して、著効することがおおいです。唯一の欠点は、「飲みにくい」ことでしょうか(苦笑)。

2009年1月15日木曜日

今年の冬は寒いですね

体の芯から冷えるような日々が続いています。
当然のことながら、冷えで悩める方が多く受診されています。
ある方は、20台のころから冷えに悩んでいらっしゃったとのことで受診されました。
入浴後もすぐに冷えてしまうとのこと。
いったん冷えてしまうと、布団に入っても温まらず、結局入浴しなおしたり、布団を乾燥機で暖めたりと苦心なさっているとのことでした。
診察をすると、圧倒的なオケツ症状にくわえ、腎に寒邪が入り込んでいる状況です。
●▲■丸を処方させていただいて、様子をみることにしました。
2週間後、再診されたときのこと。
「いかがでした?」と伺えば、「80%の改善です!」とのこと。
今年はこんなに寒いのに、今までの冬より快適に過ごせているとのことでした。

2009年1月13日火曜日

10年越しのかゆみ

その方は、診察室にはいるなり、こうおっしゃいました。
「先生はアレルギーが専門ということですよね。期待してきました」
こちらから、質問させていただく前ですから、よほど切羽詰まった状況なのかと思い、尋ねてみると
「10年来、体が痒くて仕方がないのです」とのこと。
とくに湿疹ができたり、皮膚が赤くなったりということはないのに、かゆみだけが取れない。いったんかゆいと思うと、さらにかゆくなるとのことで、どこの病院、医院へいっても治らないということです。
最近ではあきらめ、一生我慢しようと思ったこともあるとか・・・。
お話を伺い、さぞつらかったろうなと、思いつつ診察をさせていただきました。
思ったとおりの肝胆湿熱証でしたので、○○○湯を処方しました。
「漢方薬だと、長く飲まないと聞かないんですよね」と、帰りがけにおっしゃるので、
「そんなことありません。2週間で効果はでます。もし効果がなければ、私の診断が間違っていることになりますから、遠慮なくおっしゃってください」とお返事をしました。
「2週間ですか、ハハハ・・・」と、笑いながらその方は帰っていかれました。
で、2週間後、その方が再診にいらっしゃいました。
診察室に入ってくるなり、顔が真剣です。
(こりゃ、処方がきかなかったかな?)と、思いながら恐る恐る「どうでした?お薬」ときくと、その方はまじめな顔で答えられました。
「あの薬、劇薬か、なにか混ぜてますか?」
「はっ?製薬会社で作られたものですから、他の薬なんか入りっこないですよ」と、答えると
「かゆくないんです。かゆみが止まっているですよ」とのこと。
わかっていたとはいえ、漢方薬の速効性にも、そして何より、その方の表情に驚かされてしまいました。

2009年1月10日土曜日

西洋薬で痛みがとれないときこそ、漢方の出番です!

私は、卒業後、専門がリウマチ、膠原病、血液疾患といった「免疫異常」をもとにした病気を中心にしてきました。
特に、痛みを伴う疾患であるリウマチに関してはとても治療に苦労することが多かったです。
何が、そんなに大変なのか?
それは、痛み止めが効かないことです。
どんなに良い、新しい痛み止めが発売されても、リウマチの患者さんには、あまり効果が上がらないことが多かったです。
ところが、中医学を勉強した後、世界はかわりました。
西洋薬の痛み止めが効かない患者さんの、痛みの区別が付くようになったのです。
ある方は、熱をもってしまっての痛み。また、別のかたは、寒さが体に入ってしまっての痛みといった具合です。
中医学ではリウマチを痺症といいます。
これには、さらに、寒、熱、湿、風が鑑別の対象となるのですが、診察と証の区別で使う処方を分けていきます。
実際、西洋薬で痛みの止まらない患者さんに、診断結果を話したうえで処方をさせていただくと、なんと、痛みが止まるではありませんか!!(自分の経験での奏効率は8割です)
それも、処方して2週間で効果が出てくるかたがほとんどです。
漢方薬は速効性があると実感していますが、これほどとは思いませんでした。
今は、西洋薬と漢方薬のバランスを考えながら処方をしている日々です。

2009年1月9日金曜日

中医学に入って行ったきっかけ-2-

と、いういきさつで、中医学の猛勉強をしました、ハイ。
勉強しながら思ったことは、何といっても医学部での漢方治療講義のオソマツだったこと。
期末試験にいたっては、漢方薬の読み仮名を書くだけ・・・。
これで、医者になったら漢方薬が処方できてしまうんですから、いい加減なもんです。

はてさて、約半年間の勉強やら、セミナーでなんとか診断能力がつくようになって、自分の症状の診断(証)をしました。その結果を整体の先生に告げると、「ま、そんなとこなんじゃない」と、一応合格。自分で処方はできないので、知り合いの中医学の先生を紹介してもらい、診断を受けると、自分の診断と同じで、出された処方薬も一緒。●●●湯を飲み始めたのでした。
最初から、中医学の先生を紹介してくれれば楽だったかもしれませんが、自分で勉強する時間を与えてもらったことに感謝しながら、この薬をのんで、2週間で完治!!
自分が一番驚きました。
漢方薬は長く飲まないと効果が出ないという医者の何と多いことか!
それからというもの、中医学のセミナー、勉強会に参加しながら日々研鑽を積んでおります。

ついでに、この●●●湯、飲み続けています。
理由は・・・、またの機会にお話します。
(製剤名を明らかにしないのは、同じ薬を適切な診断を受けずに飲まれる方を避けるためです。漢方薬はネットで購入できてしまいますので。きちんと、医者、薬剤師の診断を受けたうえで、漢方薬は内服しましょう)

2009年1月8日木曜日

中医学に入って行ったきっかけ ‐1‐

はじめまして。
神奈川県の足柄上郡大井町で開業医をしています、「前川」と申します。
家庭のかかりつけ医を目指し、日々奮闘中でおります。

このブログを立ち上げるきっかけになったのは、自分自身の漢方治療の経験と、また日常の臨床から浮かび上がってきた、漢方治療の誤解をとくためという、大上段に構えた思いからです。
こんなに大風呂敷をひろげていいものか?と、おもいますが、気軽にお付き合いください。

自己紹介としては何ですが、私の漢方薬による治療についてお話します。
いまからさかのぼること7年前ですが、右手人差し指に湿しんができはじめました。
はじめは、何かに感染したのか、はたまた消毒薬にでもカブレたかと思い、ステロイド入りの軟膏を処方してもらって様子をみていました。
ところが、いつまでたっても治らないばかりか、益々拡大していったのです。
気が付いたら、赤くはれ上がってしまう始末・・・。
皮膚科の先生にもステロイドを内服したらといわれましたが、拒否していました。
そうこうしているうちに、ひょんなことから知り合った整体術の先生から一言いわれたのが、漢方薬との出会いでした。
むしろ漢方というよりは、中医学(ちゅういがく)と、言ったほうがいいのですが、その先生いわく、
「あー、こりゃステロイドじゃ治んないよ。原因は別だから」とのこと?
「はっ?別ってなんですか」と、聞き返せば、
「ストレスに不摂生だよね、肝臓の問題だから」とのお返事?
「???」頭のなかに疑問がでても、なんて聞いていいのか分からずにいると、つづけて
「勉強してみれば?」とのこと。
さっそく、漢方の治療体系を勉強することにしたのでした。