2009年11月28日土曜日

喘息と漢方薬~西洋薬とのコラボ~(+お詫び)

急激に寒くなった為でしょうか、最近喘息を発症するお子さんが増えています。
良くあるご相談が、「咳がとまらない」ということ。
もちろん、喘息治療はきっちりとされています。
西洋医学的には、しっかりと治療されているんですが、止まらない咳・・・。
心配されているご両親からは、「担当の先生からは、これで治る、大丈夫だから」と、いわれているのに、なぜこんなに咳が続くのか?という疑問をお話されます。
私のお答えとしましては、「西洋医学の限界」と答えています。
これは、西洋医学的治療では、この咳は止まらないということです。
「?」と、いう表情をされてしまうことが多いのですが、決して西洋医学がダメということを申し上げているわけではないのです。西洋医学では、カバーしきれない症状があるということです。

もちろん、ここで漢方薬の出番です。
たいていのパターンは脾湿に寒邪が入ってしまっている場合です。
(時に、陰虚の場合もありますが・・・)
登場するのは●●●●●●●湯、△△湯といったところです。
カゼを引いた後では、熱が軽くのっている場合がありますから、■■湯を合わせることもあります。
あとは、量の調節と合法の調節でしょうか・・・。

1ヶ月前に来院された方は、この秋に3回も連続入院したのに、ぴたりと咳が止まったとのこと。
「西洋薬はやめてしまいました」と、お母様がおっしゃられたのであわてて「西洋薬も、ちゃんと続けてくださいね」と申し上げました(冷汗・・・)。

P.S.
はっちょんパパ&ママさんへ
せっかく、ご来院いただいたのに、すいませんでした。
水曜日は、午後に大井町の健康増進セミナーの講師に出かけることになっていて、外来受付を早めに切り上げていました。どうも、すいませんでした。この場をかりてお詫びします。

2009年11月25日水曜日

最後の難関だった方

最近はインフルエンザの流行が激しく、かなり外来の患者さんをお待たせしてしまっています。
そんな中、重症のアトピー性皮膚炎の患者さんが定期受診にいらっしゃいました。
長いこと無治療で経過されていた方で、各種の処方を繰り出し、調整をしながら経過していたのですが、なかなか改善しません。
検査データ値も、治療前よりは良いものの、とても「良くなった」というレベルには達していない状況が続いていました。
半年近く続けていた、清熱目的の●●●●湯をついにあきらめたのは、丁度1ヶ月前でした。
「薬を変えますね。これ以上、●●●●湯では改善が見込めないでしょう」とお話しすると、
「やっぱり治らないんですかね・・・」と、がっかりしたご様子。
「そんなことありません。清熱剤はこれだけではありませんから。今回から、■■■■湯へ変えます」とお返事すると「はぁ・・・、そうですか。それで治る見込みあるんですかね・・・」
あまり信用されていないご様子なので、薬味を説明させていただきました。なぜ、この薬を選んだのか、その理由も合わせて伝えると、少し納得されて、お帰りになりました。
で、先週の土曜日。
「いやー、先生良くなりましたよ~」と、診察室のドアが開けられると同時に、笑顔が見えました。
あれ、確かに顔の赤みがない!
肘の皮膚も綺麗になってる!!
長い期間、頑張って治療を続けていただいた患者さんに感謝すると同時に、治癒への道すじが見えた瞬間でした。

2009年11月13日金曜日

胡栄先生の講義

私が最も尊敬する先生の一人が、胡栄先生です。
先生は北京中医薬大学を卒業されたあと、1979年、ご主人の菅沼先生と日本に来られ、以後各地で講演、研究会をされています。
先生が著された書籍も数多く、私も勉強させていただきました。
実際にお目にかかったのは、今週11日の水曜日。
伊豆漢方研究会に参加させていただきました。
講義内容もとてもわかりやすく、自分の勉強の足りないところも発見できました。
なによりも、先生が気さくに質問にもお答えいただいて、そのお人柄も素晴らしい方でした。
この講義でも先生が強調されていた「湿」ですが、やはりいろいろな悪さの元になります。
感染症、慢性疾患、生活習慣病etc・・・。
改めて、湿の認識を強くしました。

残念なのはただ一つ・・・。
先生の書いた教科書を持っていかなかったこと。
サインを頂けなかったことでした。

2009年11月10日火曜日

原因不明の湿疹

当院へいらっしゃる方で多い訴えの一つが湿疹です。
それも、原因不明のことが多いのは、以前のブログでも書きました。
秋も本番となってきて、さらにこの湿疹の訴えの方が多いと思います。
みなさんの共通項はただ一つ。いわゆる、湿熱です。
環境的にも湿証が多い日本でもって、熱を呼び込みやすいのは、食事や生活習慣が原因と推測しています。
湿熱が入りこんでいる臓腑により処方は変わるものの、原則○○○湯もしくは■■■■散のどちらかで、落ち着いてしまいます。もちろん、西洋薬も一部併用しますが、ほとんどいらなくなってしまいます。
即効性もあり、重宝しているのですが、一般的にはしられていない処方のようで、使っている先生に会うことがほとんどありません。
もうすこし、汎用されてもよいのではと、思う今日この頃です。

2009年10月30日金曜日

ウツのツボ

漢方薬でウツの薬というと、香蘇散とか、半夏厚朴湯とかがよく取り上げられます。
が、個人的には半夏厚朴湯はともかく、香蘇散などはそれほど証が合う方がいないと思っています。
気滞の診断になる方が少ないのかもしれません。むしろ肝気鬱結の方はお目にかかることが多いですが、今注目しているのは、脾虚が中心にある方のウツ証です。
ただでさえ、日本人は脾虚が多いところへもってきて、過食などが原因となってウツの症状をきたしているといった診断になるのが、一般的な傾向です。

なんでこんなことを考えているかというと、それは、先日うかがった整体の先生の治療結果からの考察からです。

久しぶりにうかがって、近況をお話しながら整体治療をうけていました。
「最近食べ過ぎてしまうんですよね~。運動しているせいもあって余計に食欲がでてしまって・・・」
何気なく言った一言に、先生曰く「じゃ、治しておきますよ」とのこと。
はて、治すって何を???と、思っていると、激痛の経絡を刺激され・・・。

で、治療後。お昼を食べようと、近くの食堂へ入って、注文しようとするが・・・・・あれ?
食欲がない・・・。お腹すいているんだけど、食べたくない・・・。
やられたと思いました。見事に、食欲が落ちるツボを押されてます。
そして数時間・・・。今度は、軽い落ち込みモードに・・・。
家に帰ってから○○○湯を内服して、症状を持ち直しました。
もともと脾虚傾向にある自分が、食欲おちたらウツっぽくなったのがきっかけで、脾虚も昂じればウツのもとになるのかと考察しているこのごろです。

2009年10月22日木曜日

やっと治ったPC

しばらくブログを更新していませんでした。すいません。
と、いうのも、PCの調子が悪いところへもってきて、アンチウイルスソフトが期限切れというダブルパンチに見舞われてしまいました。さらには、医師会の仕事で、9月から始まった、セミナーの準備やら司会の仕事におわれて、PCをほったらかしにしていたのがたたり、再起不能に・・・。
本日無事、蘇生でき、ホッとしたところで、まずはブログの更新からです。
(外来に来ていただいた患者さまの中にも、「インターネットをみました」と、言われるようになって、ちょっとうれしく、逆に、真っ先にブログの更新から始めねばと思っていました。)

ウィルスつながりでいえば、「新型インフルエンザ」です。
ワクチン騒動も続いておりますが、我が家では、銀ぎょう散製剤でしのいでします。
9月末に子供の運動会があったのですが、うちの子の出場種目の組み体操で、パートナーの子が欠席に。なんでも、インフルエンザにかかってしまったとのこと。
ありゃ?あなたは大丈夫なの?と聞いたら、少しのどが痛かったけど、前に言われてたとおり、銀ぎょう散をのんでおいたから大丈夫とのお返事。
うーん、すでに親の判断をきかずに、インフルエンザを克服していたとは・・・(汗)
やはり、適切な処方製剤は医者いらず・・・。
子供の話に一人焦るのでした。

2009年8月28日金曜日

リウマチ治療における漢方薬の誤解

漢方薬のサイトやブログで「リウマチが治った」という表現、ニュアンスをよく見かけます。
治るのかもしれませんが、大きな誤解をされているところもあるようなので、私見を述べさせていただきます。
リウマチの治療は、2つの大きなカテゴリーがあります。
ひとつは、「関節の痛みをとる」こと。そしてもうひとつは、「関節の破壊を抑制する」ことです。
これら2つはまったく別の治療方針を取らねばならないことに注意が必要なのです。
リウマチ治療に漢方薬を取りあげているサイトでは、むしろ、痛みをとる治療に比重がおかれている気がします。
確かに、西洋薬では痛みをとる治療薬というと、ステロイド剤かもしくは、非ステロイド性の消炎鎮痛薬しかありません。これらで取れる痛みは、正直もうしあげて限られています。
その点漢方薬は、個別の痛みに対して、まったく異なる処方をすることができる点で、非常にすぐれていますし、有益であります。このブログでも何人かの患者さんの実例を紹介しているのも、漢方薬の特筆すべき点を認めているからです。

しかし、ここに落とし穴があります。
つまり、痛みがないことはリウマチが「治った」ことにはならないからです。
先にあげましたように、漢方薬が関節の破壊を抑制できるか?については、十分な論拠がないのです。実際に痛みがなくても、関節の変形が進んでいく方もいます。ここが、最も注意しなければならない点です。
関節破壊の抑制という視点では、圧倒的に西洋薬の方が実績があります。
そういう意味からすれば、現在リウマチの治療においては、西洋医学と東洋医学の理想的な融合が可能な時代になったのだと思っています。